表題番号:1996A-118 日付:2002/02/25
研究課題超臨界熱水溶液中におけるアルカリ塩化物の挙動
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 内田 悦生
研究成果概要
 当研究室では、熱水性鉱床の生成に関与した熱水の化学組成を推定するために鉱物と塩化物水溶液間におけるイオン交換平衡実験を行ってきた。
 このような実験結果を天然に応用するためには、天然の熱水中に多く溶存するNaClの影響を調べる必要があり、今までに多くの実験を行ってきた。その結果、遷移金属イオンはNaClから解離される塩素イオンと結合し、主として、トリクロロ錯体として存在することが明らかとなってきた。そこで、本研究では他のアルカリ塩化物のイオン交換平衡に及ぼす影響を実験により調べることにより、アルカリ塩化物の超臨界条件下における解離定数を求めた。実験では、LiCl、KCl、RbClおよびCsCl の影響を調べた。実験系としては、これらアルカリ塩化物の影響がよく現れるようにCaTiO3-ZnTiO3-(Ca,Zn)Cl2-H2O系を用いた。実験温度は700℃とし、圧力は1kbとした。また、反応時間は4~6日とした。反応容器としては、テストチューブ型高圧反応容器を用いた。
 実験の結果、LiCl、KCl、RbCl、CsClのいずれを用いた場合も、CaTiO3とZnTiO3の2相と共存する塩化物水溶液のCa/(Ca+Zn)比は、アルカリ塩化物濃度の増加に伴い著しく低下した。このことはいずれの塩化物も実験条件下でNaCl同様かなり解離していることを示している。既存のCaCl2aqの解離定数とZnCl3-aqの生成定数を用いて実験結果から熱力学的計算により求められたLiClaq、KClaq、RbClaqおよびCsClaqの700℃、1kbにおける解離定数の対数値は、-4.3、-5.3、-5.2、-5.2であり、NaClaqに対する文献値が-4.9であることを考慮に入れると、イオン半径の小さいイオンほど解離定数が大きいことを示している。この結果が何に起因するかは現在考察中である。