表題番号:1996A-117 日付:2002/02/25
研究課題金属材料を用いた積層板の座屈に対する有利性の実証的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 依田 照彦
研究成果概要
 本研究では、人為的にスリットを入れた積層板より構成される箱形断面部材の衝撃エネルギー吸収特性について座屈現象との関連に着目しつつ検討を加えた。一般に、薄板にスリットを施すことにより座屈荷重は低下し、座屈に伴い軸方向の変形は大きくなる。このことは、座屈後の積層板の剛性低下が衝撃力を緩和する上で効果的であることを意味している。そこで、スリットの個数および配置を変化させたアルミニウム製の積層板よりなる箱形断面部材を作成し、スリットを施すことによって、このような箱形断面部材の衝撃エネルギー吸収能力が、どの程度向上するかを検討した。さらに、衝撃エネルギー吸収性能に優れたスリットの個数や配置を模索した。その際、静的載荷試験も併せて行い、衝撃試験の場合の座屈モードと比較し、どのような座屈モードをとることが衝撃エネルギー吸収能力の向上に寄与するか検討した。
 本研究では、スリットを有する供試体について衝撃実験と静的載荷試験を行い、スリットを施さない供試体の場合と比較することにより、衝撃エネルギー吸収能力に優れた積層構造を実験的に検討した。その結果、以下のことが明らかになった。
 1) 衝撃エネルギー吸収能力を向上させるためには、座屈を意図的に促進させる構造を採用するのがよく、その一つの手段としてスリットを積層板内の適切な位置に配置することの効果は大きい。すなわち、スリットは衝撃力作用時の座屈モードを制御するために有効に利用できる。
 2) 本研究のように、剛性の大きな方向(ここでは、軸方向の圧縮剛性を指す)に重量物を衝突させる問題では、衝撃力は比較的よく上部から下部まで伝達する。しかしながら、荷重の偏心や部材の初期不整による応答値の変化は、はりの曲げ衝撃試験などに比べると大きくなるので注意が必要である。