表題番号:1996A-115 日付:2002/02/25
研究課題最適化指向ディスパッチング規則の開発と評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 森戸 晋
研究成果概要
 ディスパッチングはジョブショップの最も単純かつ強力なスケジューリング方法の一つとして幅広く利用されている。対象となるジョブの属性やショップの状況を見た上で、与えられた評価尺度を最適化するディスパッチング規則は、それが可能であれば理想であるものの、実際的には最適化の方法や計算時間上の問題から現実的には困難と思われてきた。
 本研究では、フレキシブル生産システム(FMS)に見られるような同種ジョブの反復のあるジョブショップを想定し、各ジョブの納期が同種ジョブの塊に与えられているという前提下で、納期遅れの最小化を目指すディスパッチングのメカニズムを開発し、その性能を評価した。
 開発した方法は、単純な規則の中ではよい性能を誇る「作業時間ベース規則」を元にし、ある優先順序でジョブを投入したときのショップの推移をシミュレーションで予測する。その結果をもとに納期余裕が大きいジョブの作業時間を「多めに見積もった(より正確には、多めにごまかす)」上で、再度、作業時間ベース規則をかけるという、一種の局所探索法である。作業時間を「多めに見積もられたジョブ」の優先順位は落ちるために、納期余裕が少なくなり、かわって他のクリティカルなジョブの優先順序が上がるであろう、というのがこの方法の基本である。納期余裕と作業時間の修正方法とをどう関連づけるかや、近傍の定義を明確に定めることによって、具体的な方法が定まる。
 予備的なシミュレーション実験の結果、以下が明らかとなった:
 1) ごくわずかなシミュレーション回数で、6~16%程度の納期遅れ性能の改善が可能となった。シミュレーション回数上限100回の範囲では、10~25%の大幅な改善が達成された。
 2) 近傍の大きさや、納期余裕と作業時間の修正方法との関係を、より詳しく調べることによって、より大きな改善が可能と考えられる。