表題番号:1996A-113 日付:2002/02/25
研究課題アクティブ制震構造物のトータルデザイン
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 西谷 章
研究成果概要
 近年、建築構造の世界は大きな転換期を迎えようとしている。制震、免震という新技術を契機として、伝統的な耐震構造の枠組みを超えた新たな、構造設計の考え方、あり方が誕生しようとしている。
 特に本来的に予測の難しい地震に対して、地震動の大きさ、性状に応じて、建物自らが揺れの制御を行うアクティブ制震構造物は、21世紀に向けての技術として、大きな可能性を秘めており、世界的にも強い注目、期待が寄せられている。
 本研究は、このようなアクティブ制震構造建築物を対象に、構造システム全体としての構造計画、トータルデザインに向けての設計規範の開発、すなわちアクティブ制震建築物のための構造計画原論の確率を目指すものである。これにより、建物がもつ耐震性とアクティブ制震を融合した耐震システムが実現される。
 この指針の確立に向けて、制震効果評価指数にあたる数量の算出を試みた。特定の地震動を対象とする、いわば特解としての評価ではなく、より一般的な意味において、制御効果が発揮されうる振動特性を備えた建物であるか否かを評価するための指標の算出である。最上層にAMDを持つ建物を対象に、建物振動性状および最上層における制御力の影響を考慮した評価に向けて、コンピュータシミュレーション・データを蓄積した。
 また、制御対象としては、とくに大きすぎる自由度を持つモデルとなりやすい建築物の、低次元化モデルの開発も合わせて行っている。物理的な意味の明確な低次元化モデルを確立することは、限られた観測データを有効に活かして、適切な制御力を決定する観点から非常に有用である。
 以上の、評価のための指標の確立、および制御対象である建物の、物理的意味の明確な低次元化モデルの構築は、制震構造物のトータルデザインのための主要な要素となる。