表題番号:1996A-107 日付:2002/02/25
研究課題マイクロ波プラズマにおける縦磁界印加効果及び酸素混入の原因究明に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 加藤 勇
研究成果概要
 当研究室では各種の薄膜作製を目的として、マイクロ波プラズマCVD装置の研究開発を行ってきている。良質な薄膜を作製するためには、用いるプラズマのパラメータを明らかにしておく必要がある。本研究ではマイクロ波放電部にコイルを設置し、縦磁界を印加して、磁界強度変化に対する電子温度、電子密度などのプラズマパラメータを測定し、縦磁界印加がプラズマの安定性に及ぼす効果について検討した。
 コイルの中心での磁束密度を0 Gaussから2436 Gaussまで変化させて窒素プラズマのプラズマパラメータを測定し、またSiN膜を作製し、その膜質評価を行った。電子密度は磁束密度を増加させると、600 Gaussから1000Gaussまでは急激に増加するが、その後飽和することが分かった。電子密度が増加するのは、縦磁界を印加することにより、放電管壁での電子の消滅が減少したためと考えられる。
 従来、無磁界では放電しにくいH2ガスでは、a-Si:H膜を作製する際、SiH4を解離させる水素プラズマの電子密度が低いため、作製されるa-Si:H膜の堆積速度はかなり遅いものであった。しかしながら縦磁界を印加することにより、磁束密度を増加させるに従い、電子密度は増加し、かつ放電は安定する。これも前述のように、磁界により電子の拡散が抑えられたためであると考えられる。また磁界が約1400 Gauss以上では、電子密度はほぼ一定となる。これは磁界による電子の拡散を抑える効果が、飽和する傾向を持つからである。約1400 Gaussの磁界を印加することにより、プラズマの径方向への拡散が抑えられ安定で、かつ高電子密度のプラズマが得られ、7A/sという高速の膜堆積が行えることを明らかにした。
 また、酸素混入の原因については、大気のリークとチャンバー壁からのH2O放出が考えられるが、十分ベーキングすることにより酸素混入量が減っていることから、チャンバー壁からのH2O放出が主な原因と考えられる。