表題番号:1996A-105 日付:2002/02/25
研究課題地球環境保全への企業行動モデル
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 大野 高裕
研究成果概要
 地球環境問題は緊急的な課題として取り上げられつつあるが、環境に対して阻害要因となる企業行動と消費者行動を無視して考えることはできない。これまでのアプローチはどちらかといえば国や地方自治体の政策レベルでの対処についての議論が中心であり、企業行動は規制される立場の者、また消費者は協力する立場の者という観点で捉えられてきた。しかしながら、本来地球環境問題に対して、企業と消費者は主役であるべきであり、彼らが主体的に地球環境への貢献的行動をとることが継続的にできるかどうかが重要なポイントとなる。ただ、企業にとって、環境問題への対処は利益を圧迫する要因となるため、積極的な行動は取り難い。
 そこで本研究では、まず市場競争原理に基づく環境問題へのアプローチの枠組みを構築した。これは企業が環境に調和する商品を市場に投入することで、消費者が優先的にその商品を購入し、これがその企業の利益につながる、さらにこの状況で他社は競争上、自社商品にも環境対応の特性をつけるようになるので、ある商品の特定の環境問題が一つ解決されることになるという考え方である。この考え方の枠組みでは、消費者が優先的に環境に調和的な商品を選択するという仮説が成り立つことが必要である。そこで消費者400名に対する調査を行った。その結果、消費者には環境に調和的な商品に対する優先的購入の意志がある、消費者は商品の特性によって環境問題の認識の程度が異なる、環境問題が商品選択において価格、機能と並ぶ役割を果たすなどということが明らかになり、この考え方の枠組みの前提条件が成り立つことが確認できた。これらの実証を踏まえ、消費者の効用に、環境問題に関する変数を含めたモデルを構築した。これはゲーム理論に基づいて、静的な均衡状態を求めるものであり、限定的ながらも商品の選択要因として、価格、機能および環境問題を盛り込む定量的なモデルとして構築することができた。
 以上の成果を3つの研究としてまとめ、公表した(1997年5月)。