表題番号:1996A-103 日付:2005/09/09
研究課題機能性配位子の合成による反応中間体の検出
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 石原 浩二
研究成果概要
 大過剰の硫化ジメチル共存下で、テトラメチル白金(IV)錯体(cis-[Pt(Me)4(Me2S)2])に大過剰の2,2'-ビピリジン(bipy) を反応させると、[Pt(Me)4(bipy)]が生成する。このような擬一次の条件下でえられた速度定数は、ビピリジンの濃度の増加とともに一次に増加するが、硫化ジメチルの濃度に関しては逆に減少する。このことは、ビピリジンが単座で配位した中間体の存在を仮定し、その中間体に定常状態法を適用すると、うまく説明される。この反応中間体を分光学的に検出するために、3,3'-ジメチル-2,2'-ビピリジンの合成を行った。この配位子は、二つのメチル基の立体障害のために、二つのピリジン環が同一平面上になく、キレートを生成しにくい。そのため、2,2'-ビピリジンのかわりに 3,3'-ジメチル-2,2'-ビピリジンを用いれば、生成物が不安定化するため、中間体の寿命がのび、更に、低温で実験を行えば中間体の検出が可能であると考えられる。
 パラシメンにNaClおよび銅粉を加え、これに2-ブロモ-3-メチルピリジンを徐々に加え、 200℃で2時間反応させた後、クロロホルムで抽出し、蒸留と再結晶を行ったところ、純度の高い3,3'-ジメチル-2,2'-ビピリジンが得られた。
 得られた3,3'-ジメチル-2,2'-ビピリジンを用いて反応速度の測定を行たところ、予想に反して、2,2'-ビピリジンの場合と大きく異なり、反応曲線は一次にはならず、誘導期間を持つ曲線になった。現在、NMR などにより反応を低温で 追跡することにより、詳しい反応機構の解明を行っている。