表題番号:1996A-097 日付:2002/02/25
研究課題日本の企業・企業集団の史的分析-企業の統治構造と経営者の組織能力からのアプローチ
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 宮島 英昭
研究成果概要
 本研究は、第1次大戦後から石油ショック前後を主たる対象時期として、当該期の日本経済をリードした大企業に焦点を合わせ、その企業構造並びに行動特性と、以上の大企業から構成される企業集団の機能の史的分析を課題とした。具体的には、企業の統治構造(エイジェンシー関係、情報構造、誘因体系)と経営者の組織能力の形成の2点に分析の焦点を定め、対象時期を1)戦間期(第1次大戦期から37年まで)、2)戦時期、3)戦後改革期、4)高度経済成長期(55年前後から73年)、5)石油ショック後の5期に区分した。これまで、2)、3)戦時・戦後改革期について一定の前進をみたことを前提に、まず4)・5)の高度成長期、及びその後、つづいて1)の戦間期の順に、企業の統治構造の把握にとって重要な指標(株主構成・銀行借入・経営者の構成=所有型・専門経営者・経営者の交代等)、企業経営の基本的な指標(資産・売上・利益・原価・金融費用・配当)、及び企業集団に関する指標(株式保有比率融資比率・役員派遣等)に関する独自のデータベースを作成・充実させ、これをもとに分析を進めた。主要な成果は以下の通りである。
 1) 高度成長から石油ショック後の時期について、企業経営者の交代と企業のパフォーマンスの相関分析(probitモデル)を試み、いわゆる状態依存的コーポレート・ガヴァナンスの歴史的変化を追跡した。この成果は、邦語・英語の論文にまとめられ、後者は英文雑誌に投稿予定である。
 2) 流動性制約に注目した投資関数の計測を試み、その成果の一部は、日本企業システムの歴史的変化を扱った論文に活かされた。ただし、計測は、代理変数(qの測定、資本コストの算定)的確さ、企業に固有の要素の導入などの点で、まだ多くの改善の余地を残した。
 3) 本年度秋以降から、1937年の上位100社を母集団として戦間期のデータベースの作成に着手した。ただし、これは、三菱経済研究所の「本邦事業成績分析」が利用可能な1931年以前のデータ入力に多くの努力を必要とし、本年度中に完成にいたらなかった。企業タイプ(旧財閥・新興財閥・家族企業・経営者企業)別の投資関数・利益、成長率の格差と分散を計測する点に課題があったが、暫定的な計測を試みるにとどまり、今後データの充実・改善をすすめ、本研究の成果として公刊を期したい。