表題番号:1996A-084 日付:2002/02/25
研究課題「価値観」による人間のカテゴリー化の研究-展開法モデルを用いて-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助教授 椎名 乾平
研究成果概要
 展開法モデル」とは心理学的尺度化法の一つであり、被験者に刺激の順序づけを行なわせ、そのデータから、被験者と刺激の性質についての多次元尺度を構成するものである。またここで言う「価値観」とは個々人が人生においてどのような対象に価値を与えるかということで、例えばシュプランガーの理論型、経済型、審美型、宗教型、権力型、社会型の分類が有名である。研究目的は、展開法の発想を用いて、被験者個々人が自分がどのような価値観を持つのかを判断できるような手法を提案し、実際のデータで検証することである。
 2)価値観よる人間のカテゴリー化には様々な理論的興味がある。まず、カテゴリー化研究の文脈において、展開法モデルは「事例モデル」の一つの形態と捉えることができる。従って自分自身がどの価値観カテゴリーに属するのかを判断させることにより、人間が自分自身をカテゴリー化する際の過程を捉えることができるようになる。さらに、どの価値観を選択するのかは複雑な意思決定過程であり、そこでのまよいや逡巡は心理学的に興味深い問題である。
 3)人間の価値観を明らかにするのは、大きな応用上の要請もある。なぜなら、自分の価値観をはっきりさせるのは、(大げさに言うと)「どのような人生を生きるべき」かを決定する事になるからである。例えば、就職先を探す際に、いつまでも決定できない学生が多いがこれは、自分がどのような価値観をもつのかを自ら判断できない者が多いからであるという解釈も可能である。
 4)様々な価値観を記述した文章群に対して、順序づけ、あるいは一対比較を行わせて、データとする。被験者はとりあえず大学生としたが、様々な専攻にわたってデータをとり、なるべく多様な価値観を取り上げるようにした。
 5)このデータを数年前開発した最尤多次元展開法モデルによって解析する。
 6)専攻別に典型的な価値観が見られるか、他人と異なる価値観を持つ被験者がその専攻内で適応できているのかを調べるのがとりあえずの目的となるが、目下鋭意解析中である。