表題番号:1996A-073 日付:2002/02/25
研究課題植物の酸化的ストレスに対する応答機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 櫻井 英博
研究成果概要
 亜硫酸は酸性雨の原因物質の1つであり、世界の森林に大きな被害を与えている。亜硫酸の細胞内への侵入機構は、植物ばかりではなく他の生物においても明らかになっていなかった。その機構に関しては、アニオンが細胞膜にある未同定の輸送体を介して輸送されるという説と非解離型の分子種が脂質相を単純拡散するという説が対立していた。多くの実験結果は後者を支持していたが、この説では取り込みの温度係数が約2.0-2.5と高いことの説明が困難であった。われわれは、単細胞緑藻Chlorellaの亜硫酸取り込みの見かけの温度係数がやはり約2.0と高いことを確認した。しかし、亜硫酸の解離定数自体が温度により影響を受けることが判り、これを考慮して非解離型分子種の割合を算出すると温度係数は約1.45となり、この数値は単純拡散説と矛盾しない程度の大きさとなった。Chlorella細胞は低pH溶液では亜硫酸を急激に蓄積し、細胞内ATPレベルが急速に低下する。ギ酸との比較から、この低下は少なくとも30分程度の短時間では、亜硫酸特有の作用ではなく細胞の酸性化によることが判った。