表題番号:1996A-054
日付:2002/02/25
研究課題わが国における組織文化と階級構造に関する歴史社会学的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学部 | 教授 | 和田 修一 |
- 研究成果概要
- 近代工業社会における階級・階層構造は、巨大企業組織内における階梯構造並びに組織間関係を律する市場構造に大きく依存することは大方の認めるところであるが、わが国におけるこの階級の構造原理を明らかにするためには、大規模組織の運営イデオロギーである「会社本位主義」ならびに「労使一体主義」という2つの社会的イデオロギーとの関連の中で考察する必要があるように思われる。なぜならば、ひとつの階級はそれ独自の階級文化(イデオロギー)を生み出すとするならば、わが国の場合には「社会的機能の面で、組織文化を凌駕しうる階級文化が存在するか否か」という存在問題がまず問われなければならないからである。
この問題に関して着目すべきいくつかの事柄が指摘できるが、ここでは「職業文化と組織文化の社会的影響力における相互連関」をみることによって得られた知見を述べる。あるひとつの組織が有する組織文化に対して職業文化は、市場構造の直接的な影響を受けたかたちでその内容が確定するユニバーサリスティックな特質・機能を有する文化であるわけだが、その相対的影響力は組織内の権力構造を正当化するためのイデオロギーの存在、並びにその機能の状態に依存している。さらに、その権力構造の正当化イデオロギーの存在・機能は、経済効率を高めるための勤労者労働の強制使用(expropreation)を正当化しうるイデオロギーの存在・機能に依拠している。わが国の歴史的文脈の中でとらえた場合、労使一体思想の成立と定着は単に文化的文脈の中だけでとらえきれるものではないが、たとえば英国・アメリカ等の社会ではその思想が戦後急速に衰退してきた事実と合わせて考えるとき一定の文化的背景を抜きにしては正しくとらえられないことも事実であることが問題とされた。