表題番号:1996A-045 日付:2014/04/13
研究課題観阿弥・世阿弥時代の能の形成過程に関する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 竹本 幹夫
研究成果概要
 観阿弥・世阿弥時代の能のテキスト蒐集のため、数度にわたる出張と資料調査を行った。そこで撮影したフィルムの引伸し写真を元に謡本テキストの電子化作業を進める一方で、それらを用いて作品研究を試みた。すなわち博士論文の提出という最終目標に向けて、旧稿の手直しと新たな論考の発表を行ったものである。
 具体的には、96年10月の中世文学会秋季大会における竹本の口頭発表「『三道』執筆以後の世阿弥の作風」がその新考の一端で、世阿弥時代の能の形成過程の見直しを目的として、禅竹伝来の世阿弥自筆能本の曲目控えである『能本三十五番目録』の資料性を再確認し、世阿弥の前半生における能作の実態と、『三道』執筆以後の晩年期における精力的な能作活動とを対照して論じ、晩年期における世阿弥一座の所演曲総数が百番弱であること、その大半が晩年期の新作であること、それ以前は新作の実績が余り多くなく、他座所演曲の摂取や古作の改訂を押し進めることで自座の所演曲を拡大しようとしていたらしいことなどを論じた。
 また同じく10月には、最終目標であった博士論文を提出したが、本論文は観阿弥時代の能・世阿弥時代の能・世阿弥時代以後の能の三部より成り、それぞれ観阿弥時代における能の形成、世阿弥時代における大成、世阿弥時代以後の展開を論じたものであり、提出にあたっては旧稿を主としてそれを全面的に改訂している。本論文は98年度中には刊行の予定である。
 なお本研究とまったく同題で96・97両年度にわたり、文部省科学研究費補助金基盤研究Cの交付を受けてもおり、二つの研究費を同一研究に投入しているために、両研究の成果は分担を明示できない場合もあることをお断りしておく。本年は本特定課題研究の成果と明示する論考は未発表である。博士論文公刊時にその旨を明記することになろう。