表題番号:1996A-027 日付:2002/02/25
研究課題わが国における人格権概念の意義及び人格権概念を基軸とする民事責任の体系化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 藤岡 康宏
研究成果概要
 標記研究課題の準備を兼ねて、96年度には大学院の授業科目「民法研究(講義)」で、「現代不法行為法の課題」と題するテーマで、わが国の損害賠償法の問題点を洗い出す作業を進め、授業の最後に不法行為法の将来的展望について、おおよその考え方を示した。その間、研究会及び資料収集のため札幌と仙台に一回ずつ出張し、来年の構想に肉付けをすることができた。
 私の研究は、権利論の系譜を踏まえて、法秩序類型による問題提起を行い(基軸としての人格権概念の重要性)、それを通じて不法行為法の目的(公正な損害賠償のあり方)、より広くは憲法と不法行為法の関係など、今日的な重要課題について、仮説の提示を試みるものである。従来の研究との関連では、かつて「私法上の責任」(『岩波講座基本法学5~責任』所収)と題して、損害賠償法の全体的考察を行ったことがあるが、標記テーマは、その後の法発展を取り込んだうえでこの問題を再論し、さらに、解釈論上の体系化を図ろうとするものである。
 標記テーマは、数年来暖めてきたものであるが、この1年間でその内容をかなりの程度まで固めることができた。その成果は、以下の内容で順次公表していく予定であるが、諸般の事情で脱稿が当初の予定から多少ずれこむことになった。97年度はこの仕事に専心し、研究上の一区切りをつけたいと考えている。
(1)「人格権」(『新・現代損害賠償法講座2巻』(日本評論社)98年3月刊)
(2)『不法行為法』(体系書として出版予定)
(3)「損害賠償法の構造~その現状と課題」(仮題)(『早稲田法学』掲載予定)
 なお、標記テーマとの関連では、昨年度からヴァイヤース『保険契約法』の翻訳を始めたことを付記しておく(『比較法学』30巻1号以下参照)。