表題番号:1996A-024 日付:2002/02/25
研究課題ドイツ原子力法をめぐる議論の動向
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 首藤 重幸
研究成果概要
 1994年、ドイツ原子力法の7回目の改正がおこなわれたが、そこでは改正が検討された多くの項目のうちの一部が実現されたにすぎない。改正の検討対象とされた項目は、すべて今日のドイツ原子力行政において激しく争われている問題であることから、改正の検討対象になった項目をすべてで検討することによって、ドイツ原子力行政、原子力行政法をめぐる現在の理論状況をより正確に把握することができる。今年度の特定課題研究助成においては、認可の時点では認識されていなかった危険が事後的に認識されるところとなり、核技術施設に対する認可を安全性確保の観点から認可を撤回するというような場合に発生する損失補償問題を中心的に検討した。とくに原子力法18条2項の損失補償義務が免除される場合の要件の理解については対立があり、その対立の状況の整理・分析に力点を置いた。
 さらに、ドイツ原子力行政や原子力法の現状を正確に分析するための付随的な準備作業として、戦後ドイツのエネルギー政策の展開と、そのなかで原子力エネルギーがどのような位置付けをされてきたかの検討を行った。この検討では、ドイツにおいてもエネルギー政策の方向を決定する中心的位置を、常に原子力発電(所)が占めてきたことが確認された。さらに、社会民主党(SPD)とキリスト教民主同盟(CDU)が原子力政策について正反対の立場を採っていることから、原子力エネルギー問題が政治的性格を帯び、それが原子力法の運用にも影響を与えていることを析出した。
 なお、今回の研究においてドイツ原子力法における「危険概念」にも言及したが、さらなる明確化の必要性を痛感し、今回の研究を踏まえて将来の研究課題としたい。