表題番号:1996A-017 日付:2008/06/02
研究課題住宅政策の新しい動きについての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 内田 勝一
研究成果概要
 本研究において、1980年代から90年代にかけての欧米諸国の住宅政策は、「市場の失敗」と「政府の失敗」という時代的な背景の下で、非営利団体による住宅供給及び分権化された地方自治体の総合的住宅戦略によって特徴づけられることを明らかにした。また、アジア諸国においても住民の自主的な住宅建設運動が住宅政策の中心になっていることを示した。これに対して、90年代のわが国においては、規制緩和、民間市場の重視という政策が進められる中で、アジア・アメリカ・ヨーロッパに見られるような新たな方向への胎動は未だ極めて弱いことを指摘し、今後、地方分権化の深化、ボランタリズムの深化によって、住宅政策の中心的部分にも変化が生じる可能性を指摘した。
 この研究の一部は、『講座現代居住』第4巻所収の「都市定住の権利」(東大出版会・1996年10月)、第5巻所収の「世界の居住運動一序論」(同11月)において、すでに公刊したところである。さらに、今年度において、法律学的な観点を踏まえて、「住宅問題と法」(岩波講座『現代の法』第9巻『都市と法』所収予定)と題する論文として公表した(97年12月)。また、イギリスの住宅政策・都市計画の歴史的な発展と現状と関連させつつ、バーミンガム大学の研究者との国際学術共同研究を進めているところである。