表題番号:1996A-010 日付:2002/02/25
研究課題過疎地の地域資源活用と公的負担に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 堀口 健治
研究成果概要
 新潟県下一の過疎、日本一の豪雪地帯にある松之山町、その町内で最も過疎化・高齢化が進んでいる黒倉集落に、補助金を使って建てられた町の行政財産である温泉つき宿泊施設「おふくろ館」がある。定員40人の小規模なものだが、特徴はこの施設を黒倉集落の集落請負にしたことである。
 使用料は無料、ただし労賃、食材費用、光熱費等は収入からまかなうこととし、これを上回れば黒字となって請負った集落の利益となる。なお減価償却費はみないこととしている。
 結果としては黒字である。町直営にしなかったために「高給取り」役場職員が経営に参加しなかったこともあるが、なによりも集落請負制にしたおかげで、高齢者なりに分業体制が組むことができ、しかもそれが村民の生きがいともなったことである。そしてさらにこのシステムが地域産の農産物の供給、村民らしい心のこもったサービスともなり、関東および近くの地方都市の宿泊客の高評につながってリピーターが多い好結果を生んでいる。
 調理、接客、経営の主体は50~60歳台の婦人方であり、1日2直体制をとっている。寝具のあげおろし、掃除はより高齢の婦人の仕事であり、宿直は高齢の男性の仕事である。
 そして1995年1年間の宿泊客2,291人、このうち500名を抽出し、郵送アンケート調査を行ったが、64%の高回収率であった。利用者の年齢は40代と50代で半数以上を占め、リピーター利用者が4割近くを占める。ここを宿泊先に選んだ理由は、適当な料金、温泉、自然を楽しむことがあげられるているが、集落請負型のおふくろ館らしい食事、従業員のサービスもあげている。
 公的負担の温泉つき宿泊施設はかくして都市との交流施設になると同時に、高齢化した集落にその労働力にあわせた就業機会と稼得の機会を与えているといえよう。