表題番号:1996A-008 日付:2002/02/25
研究課題法人税制と個人所得税制の統合方法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 馬場 義久
研究成果概要
 本研究の目的は、1992年の米国財務省報告が提案した包括的事業所得税法(CBIT法)など企業段階で法人所得に対する課税を終結させる統合方式と、インピュテーション法など株主段階での負担調整を行う伝統的統合法を、課税の中立性と税務執行条件の容易さの観点から比較することにあった。とりわけ、本年度の研究の力点は、CBIT法かインピュテーション法かという問題を、多国籍企業の海外投資行動を考慮するなかで検討することに置かれ、資本輸出の中立性基準にして、両方式の相対的優劣を分析した。主な分析結果は次のとおりである。
 第一に、国際的二重課税の緩和制度として外国税額控除方式を採用する場合、資本輸出国・輸入国双方がCBIT方式をとるケースの方と、両国が完全インピュテーション方式をとるケースとでは内外投資の資本コスト格差は同程度生じる。
 第二に、国際的二重課税の緩和制度としてEXEMTION方式を採用する場合、インピュテーション方式よりCBIT方式の方が、内外投資の資本コスト格差が小さい。また、このケースは古典的システムよりもCBIT方式が資本輸出の中立性に接近できる。なお、このケースについてはCBIT方式は、資本輸入の中立性を完全に充足することも示される。
 第三に、以上の分析結果を基礎にして、ルディング報告による提案ー国際投資に対するディストーション緩和のためにヨーロッパ各国がインピュテーション方式を採用すべきとする提案ーを批判的に吟味した。
 今後、ポートフォリオ投資にも視野を拡げつつ、以上の分析結果を論文としてとりまとめる予定である。