表題番号:1996A-001 日付:2002/02/25
研究課題国際マクロ経済における総供給関数の役割
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 秋葉 弘哉
研究成果概要
 国際マクロ経済学において、総供給関数の果たす役割について解明したいと考え、特定課題研究助成を申請致し、この1年研究に集中致しました。
 総供給関数をどのように定式化したらよいかについては、過去の研究の蓄積を参考としていろいろ考えました結果、効率賃金モデルを開放経済に応用し、そして為替レートと物価水準の期待を内生化した小国モデルを構築し、幸いにもその誘導形を導くことができました。その結果、完全資本移動性下のマンデルの結果、すなわち金融政策は国内景気対策としては有効であるが、他方財政政策は無効であるという結果に対して、むしろ金融政策が無効になり、また財政政策にいたっては縮小的な効果を及ぼすことがあることを示すことができました。金融政策が無効となることにつきましては、金融政策により為替レートが減価し、物価水準上昇の期待から将来の為替レートも減価すると期待され、したがって利子率は不変のままで供給が反応しないことがわかりました。しかし財政政策は名目為替レートを増価させることにより物価水準を下落させ、その結果実質為替レートをむしろ減価させることが示されました。効率賃金モデルに基ずく総供給関数は実質為替レートの減少関数となることが証明されているので、財政政策はマンデルの結果よりもなお悲観的なものになってしまうことを示すことができました。
 また、このモデルにおける非不胎化介入は、中期的に実質産出量に影響を及ぼさないことを示すこともできました。そして、非不胎化介入があると、予期された財政政策の相対的な有効性は低下し、また金融政策については無効になることを示すこともできました。