表題番号:1995B-032 日付:2002/02/25
研究課題バーチャルリアリティを用いた日本文化の研究法の開発と薬師三尊像による実証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 野呂 影勇
(連携研究者) 理工学部 教授 大頭 仁
(連携研究者) 文学部 教授 大橋 一章
研究成果概要
 本研究では、臨場感を高めるメディア技術としてバーチャルリアリティ(VR)に注目し、日本の有形文化財の観察方式ならびに、異文化間での伝達方式の開発とその効果の検討を目的とした。そこで本研究では、VR技術を応用することにより、日本の寺院の空間に、実際に立つことのできない海外の人達に、日本の優れた文化遺産の真の内容を伝えるための、作品制作およびその一般公開を行った。作品の主題として、奈良薬師寺の薬師三尊像を選択した理由は、以下の2点である。
 1)薬師三尊像は、日本の仏像彫刻として、最も美しいものの一つであること。
 2)台座は、東西諸地域の文化の影響を色濃く映しており、単一宗教を超えた世界規模の理解が可能であること。
 作品制作は、薬師寺の協力と日本学・東洋美術史などの日独研究者の監修の下に行った。メディアとしては、2眼式立体映像、バイノーラル立体音響および環境芳香を統合した。
 本作品「Yakushi Nyorai」の公開は、1995年11月29日、30日の両日、ドイツ・ボン大学において、ボン市民を対象とした催し「Der Buddha der Erleuchtung im Yakushiji-Tempel zu Nara」として公開した。公開にあたっては、参加者の作品理解を深めることに留意し、10人を1グループとした少人数が、順番に3つの部屋を巡るという、体験ツアー方式を採用した。
 本作品および催しは、ボン市の新聞やラジオなどのマスコミに報道され、好意的に紹介された。参加者の反響としては、おおむね好評であったが、新しいハードウェアなどを期待していた参加者の中には、物足りないという声もあった。われわれは、本作品の制作と公開を、日本文化の新しい研究法としてと同時に、日本的なVRへの試みとしてとらえている。