表題番号:1995B-029 日付:2002/02/25
研究課題価格と取引量の関係に基づいた市場の情報効率性に関する考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 佐藤 紘光
研究成果概要
 従来からの資本資産評価モデル(CAPM)や裁定価格理論(APT)に始まる様々な資本市場理論において、資本市場は需給均衡や無裁定条件によって議論されてきた。しかし、実際の証券市場の実証分析で株価の特異な現象(株価変化と取引高の相関性、アノマリー)が示されてくると、これらのモデルで説明できない市場の様々な要因をモデル化する必要が出てきた。この要因の主なものに市場の非効率性、すなわち投資家の情報の非対称性、市場のノイズ(プログラム取引など情報に基づかない取引)が挙げられる。
 本研究ではまず、情報の非対称性と出来高の関係という視点から出来高を分析した。ここではKarpoff(1985)のモデルに基づき、投資家の情報非対称性の尺度として、アナリストの業績予想値を用いて、価格、取引高と情報の関係を統計的に分析した。このようなデータは、従来利用可能ではなかったが、近年データベース化が進んでいる。その結果、情報非対称性の尺度のうち投資家間の評価のばらつきや、評価の改訂量が有意に価格形成に影響を与えているという結論が得られ、情報の非対称性の影響の大きさが確認できた。
 一方で、ノイズトレーダが存在する条件下での、価格と取引高の関係について分析した。ここでノイズトレーダは、証券市場に加えてこれと相関するAR(1)過程に従う超過収益率を持つ私的投資機会をもっており、次期の超過収益率を予測し、期待効用を最大化するよう行動する。ノイズトレーダと情報に基づく投資家の比率をαで与え比較静学を行った。その結果、市場の非効率性が価格、出来高及び、価格変化と取引高の相関性に影響を与えていることが確かめられた。
 加えて本研究では、証券価格評価等に関するいくつかの追加的な成果が得られた。