表題番号:1995B-024 日付:2003/04/20
研究課題近世城下町を基盤とする地方都市における明治・大正期の官庁街の建設と都心改造に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 佐藤 滋
研究成果概要
 本研究では城下町基盤への官庁施設の設置の実態と、それが城下町の近代都心形成に与えた影響を分析した。分析方法は、官庁施設の設置当初から現在まで約30年おきに(1900、1930、1960、1995)1/10000の地図を作成し、以下の3要素の関連を分析した。尚、近代における官庁施設設置は、初めて本庁舎が置かれた場所に着目した。
 建築:官庁施設・教育施設・医療施設・文化施設・民間施設、
 骨格:街路・都市計画街路、
 自然環境:河川・堀・水路・山
 その結果、官庁施設を都市改造の手段として積極的に用いた例が3都市に見られた。山形、宇都宮では県令三島通庸のもと、寺社地であった城下域周縁部の街道の延長上等に新たな街路をひき、そのアイストップに県庁をおき、街路の両側に公共施設を設置して新たな都市景観を構築した。甲府では県令藤村紫郎により城郭の再開発が行われ、大手道沿いに県庁をはじめとした藤村式と呼ばれる建築様式の官庁施設等が整備された。
 県庁設置後建設された官庁施設の設置には、大きく2つの型が見られた。
 .城下町基盤を生かし、城郭周辺部への官庁施設の設置
 城郭周辺部は城下町の近代化において最も改造され、官庁施設の建設はその結果でもあった。城郭周辺に官庁施設が設置された都市は21都市あり、その設置パターンは以下の5類型が存在した。官庁施設は城郭の中でも既存の商業地区に近い場所に多く設置された。
 城中心型、大手門(広小路)周辺型、大手道沿い型、町家域方向集中型、街道挟み型
 2.城下域周縁部に官庁施設を設置城郭ではなく
 城下域の周縁部に官庁施設を設置する都市があり、以下の2つの類型があった。
 城下域周縁部集中型、城下域周縁部分散型
 以上のように、明治の官舎街とその後の都市の近代化過程での都心改造の関係を明らかにした。