表題番号:1995B-019 日付:2002/02/25
研究課題相対論的天体現象の電波観測
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 大師堂 経明
(連携研究者) 理工学部 教授 小原 啓義
(連携研究者) 理工学総合研究センター 教授 藤本 陽一
研究成果概要
 (概要)本研究助成により、西早稲田キャンパス15号館屋上に建設した64素子電波干渉計に、高性能の低雑音受信機を取り付けることができ、感度を3倍に向上させることができた。これは、アンテナの集光面積を3倍に広げたことに相当する。その結果、新たに50億光年の距離にある活動天体であるガンマ線クェーサーや、数日のタイムスケールで電波や光の強度の変動が観測されるBL Lac型天体を観測できるようになった。これらの、短時間変動現象は相対論的速度で我々に向かって飛び出す膨張プラズマ雲が引き起こす時間圧縮効果と解釈できる。
 1.低雑音受信機の開発
 アンテナに接続してある従来の64台の受信機は、衛星放送用の受信機を購入して、大学院生や学部生の力を得て8年前に改造したものである。すなわちフィルター部にテフロンフィルムをはさんで電気容量Cを変更し12GHz-->10.6GHzの変更を行い、また共通のローカル信号を外部から供給するために、誘電体共振器(DRO)の部分の回路基板をカッターで切り取って、新たに大学院生の西掘一彦が作成したローカルアンプ回路基板を取り付けた。当時においては、受信機雑音温度200Kという、常温の受信機としては極めて高い性能を示しており、早稲田大学を訪れたケンブリッジ大学のヒーウィッシュ教授(パルサーの発見によりノーベル物理学賞授賞)は、「我々も少ない予算ではじめた。少ないから工夫するんだ」と大学院生の活躍を評価した。今回の、新しいアンプは、この設計をもとに、8年間に驚異的な低雑音化が達成されたHEMT(高電子移動トランジスタ)を用いて製作した。その結果、常温で50K-70Kの受信機雑音が達成され、上記 BL Lac天体の観測(N.Tanaka et al, 1997)などが、可能になった。
 2.相対論的天体現象
 今年(1997年)になってイタリア/オランダのガンマ線観測衛星SAXにより、30年間謎であったガンマ線バースト源が、宇宙論的距離にある銀河らしいことが分かった。まだ、事態は流動的であるが、相対論的ビーミングが予想外の効果を引き起こしている可能性がある。早稲田の観測装置をはじめ、多角的な観測体制が早急に必要である。