表題番号:1995B-017 日付:2002/02/25
研究課題生殖行動の内分泌調節とその統計学的解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 石居 進
(連携研究者) 教育学部 教授 菊山 栄
(連携研究者) 教育学部 教授 石垣 春夫
(連携研究者) 人間総合研究センター 助手 高橋 則行
研究成果概要
 繁殖期のヒキガエルの雌は、産卵の前には雄の抱接を受け入れるが、産卵後は受け入れなくなる。これは産卵前の雌は胸部腹面に触られると体を振動させる反射運動を示し、これが雄への拒否の信号となることによる。雌のこの反射運動はよく知られているが、この反射の周年変化については詳しい研究はなく、またホルモン調節の有無についても全く分かっていなかった。我々はまずこの雌の反射運動が産卵後から秋の終わり頃まで存在し、秋の終わり頃から徐々に出現することを明らかにした。ついで、この反射の消えている繁殖期の産卵前の雌でも、捕獲するなどのストレスを与えると、この反射が現れることを見つけた。また、繁殖期の雌では、神経性脳下垂体ホルモンであるバソトシンがこの反射を促進することを見つけた。さらにこの反射の存在する非繁殖期の9月頃の雌では、プロスタグランディンというホルモンがこの反射を抑制することも明らかにした。すなわち、繁殖期の産卵前の雌ではプロスタグランディンが多量に分泌されている可能性が示唆された。そこで、我々は繁殖期の色々な時期に捕獲した雌の血液中のプロスタグランディンの濃度を調べたところ、産卵前にはその濃度が高いことが証明された。すなわち、この雌の反射運動はホルモンによって支配されていることがほぼ確かめられた。また、この研究では雌のこの反射運動(体の振動)の単位時間当たりの頻度を指標としたが、この指標の個体間の変動は、平均値が高いほど大きいという傾向を示す上に、正規分布をしないことが分かった。そこで、この研究のデータ解析には等分散と正規性を前提条件としたt検定法や、分散分析法の適用は困難であった。そこで我々は、無作為化検定法などの非母数的方法を用いて解析を行った。またその為のBASICによるプログラムも作成した。