表題番号:1995B-008 日付:2004/11/18
研究課題補償光学系による光波位相分布の定量的可視化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 小松 進一
(連携研究者) 理工学部 教授 大頭 仁
(連携研究者) 理工学部 教授 橋本 周司
研究成果概要
 光波の位相分布の可視化とその精密測定を行うために、光学系の瞳関数を動的に適応制御可能な補償光学系を利用する新しい方法を提案し、システムの設計とアルゴリズムの最適化を通して本方法の有効性を確認した。
 光波の位相分布には透過物体の屈折率分布、あるいは反射物体の三次元表面形状およびその変形などの情報が反映されるために、その可視化と高感度測定は工学的に重要である。実験室スケールで補償光学系の適応制御を行い、これまで干渉法その他で行われてきた光波位相分布を物体波のみから位相分布の推定をすることをめざし、そのための新しい方法と適応制御アルゴリズムを提案し、その特性を検討した。ここで提案した方法では、フーリエ変換を光学的に行い、補償光学系の瞳関数の位相分布を最適制御する。そのための基本システム構成は、光波の位相変調を行う液晶パネル、それを瞳面に置いたレンズ、およびこれでできた回折像を撮像する CCD 素子、さらに回折像を取り込み、その拡がり具合を計算して最小となるように液晶パネルの位相変調分布を適応制御するコンピュータからなる。この方法は、光波センシングの新しい一手法として、1. 参照光、基準面などを必要とせず、光学系が簡単となる。2. そのため、これらの光学部品の収差の影響が少なく、外部振動などに強い極めて安定な系となり、3. 測定感度および精度の点で、向上が期待できる、などの特色をもつ。
 提案した方法に関し、(1)液晶パネルによる位相変調制御特性の測定(2)フラウンホーファー回折像の撮像とコンピュータによる取り込み。(3)最適制御アルゴリズムの検討、など、基本原理の検証と光学的な問題点の整理を行った。とくに(3)では、瞳関数の制御アルゴリズムとしてシミュレーティッドアニーリングを採用し、その際にツェルニケ多項式を利用して制御の高速化を図る方法について計算機シミュレーションにより検討し、その有効性を確認した。現在、液晶パネルをオンライン制御する適応制御光学系の完成をいそいでおり、その後これを薄膜試料・生物試料へ応用する予定である。