表題番号:1995A-310 日付:2002/02/25
研究課題イオン対再結合ダイナミクスにおける量子磁場効果
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 浜 義昌
研究成果概要
放射線によって誘起される溶液中の短寿命イオン対の光検出電子スピン共鳴(ODESR)におけるシグナル反転現象について検討を行った。溶液中でのイオンの移動度がかなり遅くなり,かつスピン間の交換相互作用が大きくなると,T_-S1ミキシングにより,三重項の電子スピン共鳴時に一重項状態の増加が起こり,ODESRシグナルが蛍光の増加分として観測される。通常のODESRにおいてはT0-S1ミキシングにより一重項の減少分を観測するが,このような増加分を観測することによりイオンの移動度に対する情報を得ることが出来た。通常では分子の大きさからして移動度が大きく観測可能と思えた溶液系に対し観測が出来なかったことの理由として,接近時にトンネル効果によりイオン対寿命が短くなると仮定しこの現象を説明することが出来た。今後理論的な取扱も交えて確証を得ていく予定である。
その他,イオン対再結合時の蛍光に対する量子ビート効果,コヒーレント量子効果について検討した。量子ビート効果に対しては本年度は超微細相互作用(hfi)効果によるビート検出に努めた。今までg-因子に起因するビートについては比較的容易に検出できたが,hfi効果によるものは溶質の組み合わせが微妙であると共に,その効果もg-因子効果の時よりも小さいことが見い出された。今後検出に適した系を見い出しその因果関係を見い出していく予定である。
コヒーレント量子効果についてもその系の選択が複雑であるが,その効果の顕著さからイオン対の才差運動周波数の相関についての情報や,超微細相互作用についての情報を得ることが出来た。