表題番号:1995A-303
日付:2002/02/25
研究課題雌性行動制御神経機構とプロゲステロンの性行動抑制機構
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学部 | 教授 | 山内 兄人 |
- 研究成果概要
- 雌哺乳類の中枢神経系には性行動発現に対する促進神経機構と抑制神経機構が発達している。性行動抑制力は前脳の中隔-視索前野と中脳背側縫線核に存在している。雌哺乳類の性行動はエストロゲンとプロゲステロンが中枢神経系に直接作用し制御を行っている。エストロゲンは中枢神経系内の促進機構と抑制機構に働いて性行動を促進する。一方,プロゲステロンはエストロゲンと同様に雌性行動を促進する働きがあるが,投与するタイミングによってはエストロゲンによって引きおこされる雌性行動が抑制される。すなわちプロゲステロンは発情の停止作用をもつ。本実験ではプロゲステロンによる発情抑制作用が脳がどのような機構と関係しているか,その解明の第一ステップとして,雌性行動抑制機構である中隔,視索前野,背側縫線核との関係を調べた。
雌ラットの卵巣を除去すると同時に,中隔,視索前野,背側縫線核を高周波破壊装置で破壊した。プロゲステロンの抑制作用を見るために5mgのプロゲステロンを5μg/kgのエストラディオールベンゾエート(EB)投与1時間前に注射し,EB投与44時間後に0.5mgのプロゲステロンを投与して性行動を調べた。その結果,中隔,視索前野,背側縫線核を破壊された雌ラットも性行動発現の低下が見られた。この結果から,プロゲステロンは中枢神経系の抑制機構に働いて性行動の抑制をしているのではないことが明らかとなった。さらに,それらの部位を破壊し,雌の性行動を示すようになった雄ラットに,EB投与前にプロゲステロンを注射しても雌性行動の低下が見られた。このように,雄ラットにおいても,プロゲステロンの雌性行動抑制作用がみられることが示された。