表題番号:1995A-302 日付:2002/02/25
研究課題国際音声記号体系にもとづく英語の聴取・発音の指導のための教材の編集
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 比企 静雄
研究成果概要
コンピュータを利用した日本人学生のための英語の聴取と発音の学習システムの,教材の導入部として,日本語と英語の母音・子音体系の違いを音声学的に分析して,詳細に対比させて提示する方法を検討した。
このための枠組みには,国際音声学協会(Internatioal Phonetic Association)が1989年に改訂した国際音声記号体系(International Phonetic Alphabet IPA)を使った。(これは現在,発音記号として多くの辞書で採用されている。)この枠組みのうえで,日本語と英語を比較するのに,母音・子音体系の相互に近い音声を手がかりに利用する。このため,まず,日本語の音声の側で,音節の構造やその結合関係によって,種々な発音条件で起こり得る変種を,できるだけ多く取り込んで,それらを系統的に表記した。
母音の音声については,国際音声記号体系の,舌の上下と前後の2次元に配置した母音表に,唇の形状を加えた座標の中で,{i} に2変種,{e} に1変種,{a} に4変種,{o} に1変種,{u} に6変種を,無声化,舌の上寄り,中央寄り,下寄り,唇の丸めが少ないなどの,各種の補助記号を加えて表示した。
また,子音については,調音の方法と位置の2次元の子音表の座標の中で,まず,有声と無声の破裂子音や鼻子音を口蓋化した対を設け,さらに,/r/の音素に4変種,/g/に4変種,/p/と/b/にそれぞれ5変種の音声を取り立てた。
このようにして日本語の音声の母音・子音体系を拡張することによって,双方の言語の多種類の母音や子音を相互に近づけて,共通に扱えるような比較の手がかりが用意できた。これらの表示は,音声記号のフォントも含めて,コンピュータ・プログラムの様式で,教材の作成に利用できるようになっている。