表題番号:1995A-299 日付:2002/02/25
研究課題消化管運動ペースメーカー細胞の形態学的解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 小室 輝昌
研究成果概要
○研究の背景および目的
固体の生命維持に重要な消化管運動は,自律神経系による調節に加えて,内在するペースメーカーに依って支配されている。従来より,ペースメーカーの存在は,生理学的に知られるところであったが,その細胞学的根拠については不明であった。本研究ではペースメーカーの細胞学的特性および神経,筋要素との組織学的関係を明らかにし,ペースメーカー機能発現の形態学的根拠について検索した。
○材料および方法
実験動物としてはモルモットの大腸を用い,標的細胞の微細構造,細胞骨格蛋白の性質を明らかにするため,電子顕微鏡的ならびに免疫組織学的に検索した。また,古典的記載との対照をはかるためヨウカ亜鉛-オスミウム酸(ZIO)法も併用した。
○結果および考察
ZIO法にて固定,染色後,大腸の筋層を剥離,伸展標本として観察すると,粘膜下結合組織と輪走筋層との境界部によく発達した神経繊維網が黒染して現われ,これに付随して星形の細胞が認められる。この細胞は,数本の長い突起によって相互に連結し,細胞性の網状構造を作るが,その形状,構成は,消化管運動ペースメーカーとして現在推定されているカハールの介在細胞(Thuneberg, 1982)と酷似する。
同一の標本を電子顕微鏡用試料として再包理し,超薄切片として観察すると,標的細胞はZIOの沈殿物を含む細胞として容易に識別される。この細胞は,よく発達したコルジ装置,小胞体,ミトコンドリアを含み,基底膜は無く微細構造的には繊維芽細胞の特徴を有する。また,間葉系細胞に豊富に存在するビメンチン,フィラメントの抗体で染色するとZIO法にて描出された星形の細胞と同形の細胞が観察される。以上の結果より,モルモット大腸に見られるペースメーカー細胞は,間葉系由来の繊維芽細胞様細胞と推定した。