表題番号:1995A-292 日付:2002/02/25
研究課題元老院国憲按の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 島 善【タカ】
研究成果概要
明治9年から13年にかけて元老院に於て起草された憲法草案については,関連資料が関東大震災や米軍の東京大空襲によって焼失したため,長い間,詳しいことは知られなかった。しかるに筆者は,その資料の写本が宮内庁書陵部に所蔵されていることを知り,マイクロフィルムに撮って調査・検討したところ,従来知られていなかった起草経緯がきわめてはっきりとわかるようになった。いま,その結論のみを記せば以下の通りである。
(1)国憲按第一次草案の草案には法制史学者の横山由清が深く関与していたことが初めて明らかになった。
(2)その結果として,中江兆民や河津祐之が起草の中心人物であるとする説は,再考を余儀なくされるようになった。
(3)国憲按の草案が多数出現したことにより,従来の通説である第一次案,第二次案,第三次案という区別も,考えなおさなければならなくなった。
(4)今回の調査・研究により,国憲按起草のために多くの資料が作成され,その後の憲法編纂にも使用されていることが判明したので,今後さらに研究を深め,元老院が果たした役割を考え直す必要が出てきた。