表題番号:1995A-290 日付:2002/02/25
研究課題地域特性を踏まえた「老人保険福祉計画」策定についての実証的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 久塚 純一
研究成果概要
前年度の研究成果(福岡県を中心とした研究)を踏まえ,1995年度は佐賀県,熊本県を中心として,老人保険福祉計画の策定について調査・分析を実施した。
福岡県における調査と同様の調査票によるアンケート調査を実施するとともに,ヒアリングをおこなった。
アンケート調査票の回収は佐賀県が17であり(17/49市町村),熊本県が35であった(35/94市町村)。福岡県と比べると,回収率は低い。
佐賀県においても,熊本県においても,地域特性を色濃く有する自治体が多いことが指摘できるが,計画策定担当者の目からすれば,計画自体は必ずしもそのようなものとして策定されたとは感じられていない。その理由は,1. 地域特性を有する山村や農村部においては,福祉に対しての住民の意識が低く,それがニーズ測定に反映したと思われる点,2. 山村部や農村部の自治体では,計画策定を担当する職員の配置が十分ではなく,結果として,国や県が示した「計画策定の指針」や「マニュアル」に従わざるを得なかった点,3. 財政の事情などが挙げられる。
また,福岡県境の自治体,たとえば,佐賀県基山町では,評価の高い計画が策定されたとされていることが注目されるが,これは,福岡県における「老人保健福祉計画」の全般的先進性に影響されたものと思われる。
このことは,市町村,都道府県といった行政の圏域をベースとした計画策定には,地域の生活実態が反映されにくく,むしろ,生活の圏域をベースとした計画の策定が望まれることがわかる。そのような結果を導いたもう一つの要因としては,担当者の計画策定に対してのアイデンティティーの問題が挙げられる。地域性を踏まえた計画とするためには,全国的な指針によるものではなく,むしる,担当者の計画策定に対してのアイデンティティーを高めることが望まれるものと思われる。