表題番号:1995A-288 日付:2002/02/25
研究課題日本への直接投資の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 浦田 秀次郎
研究成果概要
日本への対内直接投資は近年では上昇傾向にあるものの,他の先進諸国と比べると,未だ低い水準にある。
日本への対内直接投資が低水準であることから,日本市場における外資系企業の占める位置は他の先進諸国における外資系企業の占める位置と比べると小さい。しかし,日本へ進出している外資系企業は研究開発に熱心であり,また,貿易志向が強い。このような特徴を持つ外資系企業の進出は,日本経済の研究開発能力を高める好ましい効果を持つ。さらに,外資系企業による進出は,それ自体が日本経済への競争圧力を強めるだけではなく,貿易の拡大を通して,より一層,競争圧力を強めることから日本経済の活性化につながる。
外資系企業の日本進出への障害としては,「異なる商習慣」「人材の確保の難しさ」「規制や政府の行政指導」など,日本企業と比べて外資系企業が強く感じる障害と「地代と家賃の高さ」「高い労働賃金」「高い原材料費」など外資系企業だけではなく,日本企業にとっても日本で事業を行うにあたって深刻な障害であるものがある。しかし,差別的措置や情報入手の困難さなどで外資系企業が不利な立場に置かれていることから,それらの障害から影響を取り除く外資優遇措置が正当化される。ただし,進出を考えている外国企業,あるいは,すでに操業している外資系企業は日本政府による優遇措置だけに頼るのではなく,独自で適切な経営戦略を実践することが重要である。一方,後者の障害に関しては,マクロ経済政策など日本企業と外資系企業を無差別に扱う措置で対処すべきである。また,外資系企業の対日直接投資の主要な動機が「日本市場の成長性」であることから,適切なマクロ経済政策が実施されることで,日本経済がかつてのダイナミズムを取り戻せば,対内直接投資も拡大すると思われる。