表題番号:1995A-281 日付:2002/02/25
研究課題遠心送風機における高次翼通過周波数騒音の発生機構とそのモデル化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 太田 有
研究成果概要
遠心送風機の羽根車には低流量域において旋回失速と呼ばれる非定常現象が発生する。この旋回失速の発生は,単に送風機性能を著しく低下させるだけでなく,振動や騒音という重大な環境問題を引き起こす場合がある。
本研究ではこの旋回失速に起因して発生する低周波数領域での離散周波数騒音に焦点を当て,特に3次成分まで顕著に現れる高周波成分と失速領域の周方向伝播特性との関係を定性的・定量的に把握することを最終目標としている。当年度はX線熱線流速計を羽根車後方に設置することで失速セルの周方向伝播特性を明らかにし,離散周波数騒音の発生周波数に関する知見を得ることを指向する。
羽根車周方向10点,軸方向10点,計100点での計測データに,失速セルの旋回に対して同時性を持たせるような処理法を提案した。この方法は基準位置にトリガー用I型プローブを設置し,各データ取得時に常にX型プローブとの同時計測を行い,トリガー波形の相互相関解析により位相差を算出するもので,比較的簡単な処理により全測定点同時計測と同じ結果を得ることができる。
さらに,遠心機特有の非対称渦型室形状に起因すると考えられる羽根車吐出流量の周方向特性が存在することを明らかにし,周方向各測定点での平均流速を代表速度として無次元化して評価する方法を採用した。本方法の採用により,周方向の流量特性に重畳する形で存在していた失速セル通過による低流速域の存在を明確に把握・定義することが可能となった。さらに,運転流量の低下に伴う失速セル旋回周期の違いを的確に判断する基準を提案することができた。これにより旋回失速に起因する離散周波数騒音の発生周波数を調査する有力な手掛りを得ることができた。
一方,旋回失速騒音の音圧レベル予測に関しては,振幅が代表速度の6乗に比例して増大する双極子的な音源であることを示し,系外へ伝播する際に吸込・吐出管路系の共振現象に強く影響されることを明らかにした。