表題番号:1995A-276 日付:2002/02/25
研究課題化石燃料の前処理を目的とした脱硫微生物の探索と能力評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 桐村 光太郎
研究成果概要
現在,化石燃料中の硫黄分の燃焼により発生する硫黄酸化化合物は,大気汚染や酸性雨の原因となるため,環境保全の観点から問題視されている。化石燃料の燃焼前の脱硫も実施されているが,ジベンゾチオフェン(以下DBTと略)のような芳香族硫黄化合物は除去が困難である。さらに脱硫処理は高温高圧条件下で行われる物理化学的プロセスに依存しており,地球環境への負荷も大きい。このような背景から,省資源・省エネルギー的プロセスとしての微生物を利用した生物化学的脱硫技術の開発にも期待が寄せられている。
本研究においては,難分解性の有機硫黄化合物のモデルとしてDBTを使用して,硫黄を遊離する微生物を探索した。日本各地の各種土壌や原油スラッジを試料として,DBTを唯一の硫黄源として利用可能な微生物を集積し,純粋分離して数種の細菌を取得した。酸素を利用して酸化的にDBTを利用する細菌としてはGordona属のMX-1株が優良株であるり,培養に伴い50mg/lのDBTを3日間でほぼ完全に分解した。またDBTの消費量と比例して2-ヒドロキシビフェニルの蓄積が認められたため,分解経路はDBT,DBTスルホン,2-スルホビフェニルを経由して硫酸イオンとして硫黄原子が酸化されたものと判断された。なおMX-1株は好アルカリ性細菌であることも判明し,新規な脱硫プロセスに利用可能と考えられる。
一方,窒素置換した条件下でDBT分解を行う微生物も取得した。酸素非存在下での脱硫は爆発等の危険を回避しうるため望ましいものであるが,取得した微生物の菌学的同定は現在進めている途中で,DBT分解経路に関する詳細は不明である。100mg/lのDBTを2週間で40%,1g/lのチオフェンカルボン酸を4週間で完全に分解する細菌も取得されており,多様な条件下での微生物脱硫の可能性を示唆する結果が得られた。