表題番号:1995A-272 日付:2002/02/25
研究課題固体粒子の表面改質による静電選別性の向上(その2)
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 大和田 秀二
研究成果概要
静電選別は固体粒子表面の電気伝導性の差を利用する固固分離法であるため,その表面状態を人為的に変えることにより分離挙動を制御することができる。当研究室では昨年度来,界面活性剤処理・電解質水溶液噴霧の二段解前処理を施して,主に絶縁性粒子の静電選別挙動(以下これを静電挙動と呼ぶ)変化に注目してきた。
本年度の研究目的は,その後段の電解質水溶液噴霧の最適化である。なお,本研究で用いた静電選別機は,コロナ電極・静電電極併用式のドラム型のものである。
整粒した3種類の絶縁性粒子について,電解質水溶液濃度および噴霧後の乾燥時間を変えてそれぞれの静電挙動を観察した結果,1)静電挙動は電解質水溶液を噴霧することでより導電的となるが,電解質濃度の影響はほとんどないこと,2)噴霧後の乾燥時間すなわち粒子表面の水分含有率によって静電挙動が変化し,平均飛距離(粒子がロール端から飛ぶ平均距離)と水分含有率の関係はある形に定式化できること,などが判明した。
通常の静電選別においては,固体粒子はコロナ放電場中で帯電,静電場中で分極し,絶縁性粒子では接地ロールと粒子間に電荷の移動が起こらず粒子はロールに付着して回収される。一方,導電性粒子では固体・接地ロール間の電荷移動が容易に起こるため,粒子はロール表面と同符号(電極と異符号)に帯電,ロールから反発(電極側に吸引)されて飛び出すこととなる。ここに固体粒子の電気伝導性の違いによりその静電挙動が連続的に変化して分離が可能となる。ところが本実験条件のように粒子表面に電解質水溶液の皮膜がある場合,3種類の鉱物試料はともにほぼ同様に導電的な挙動を示し,この場合の帯電・電荷移動が固体粒子のそれとは全く異なる現象であることが理解された。この事実は,本法の実用化においてはむしろ好都合であり,また2)の結果についても,本法の表面改質条件が敏感であるものの容易に制御できることを示すものである。