表題番号:1995A-270 日付:2002/02/25
研究課題ロバスト構造に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 山川 宏
研究成果概要
近年,コンピュータのハード・ソフト両面の飛躍的な発展により,数値計算による構造設計者への支援が様々な面で活発になってきている。その中でもコンピュータを利用した設計の自動化は年々実用化していると言えよう。しかしながら,そこで重要になるのは,それまで設計者が経験や勘で行ってきた設計目標,すなわちどのような設計を行うのかを明確にする点であると言えよう。設計の流れは大別すれば,概念設計などを行う設計の上流部と詳細設計などを行う設計の下流部に分けられる。この設計の流れの中で,設計目標は設計の下流部においては決定されている場合が多いが,設計の上流部においては設計の自由度が大きく設計者にその設計目標が大きくまかされている場合があろう。
「ロバスト構造」とは一言でいえば,構造や構造を取りまく環境の変動に対して,その挙動,応答,特性が大きく変化しにくいような特徴を持つ構造の概念である。このようなロバスト構造は,製造誤差や,実際の環境が設計環境とは多少異なる場合に有利な構造であるばかりでなく,設計上流部での設計目標の一つの有力な候補となりうる。なぜならば,設計の下流部においては,設計の上流部で設計された構造の設計変更が行われることもあれば,設計環境も変化する場合があると考えられる。更に,設計の上流部においてその時点では設計の決定が行えないようなパラメータも存在するものと考えられるが,設計下流部における設計の効率を更に上げるためには,できるだけ,そのパラメータの決定可能領域を広げるべきであり,ロバスト構造はそのような構造設計を行うことが可能である。以上のような「ロバスト構造」を設計すると有利であると考えられる点が一連の研究より再確認された。
設計の上流部において,「ロバスト構造」を設計するのに必要なことは,「広義のロバスト構造問題」を解決することである。大まかに言って,ロバスト構造は基準関数と呼ばれる関数の情報を基に設計されるが,その基準関数が,構造全体を表わすような大局的な情報の際に問題は広義のロバスト構造に分類できる。この広義のロバスト構造問題の大きな問題の一つに,基準関数の選択がある。本年度の研究においては,いくつかの基準関数を選択し,それにより設計されるロバスト構造の特性を主に数値計算例を通じて考察し,検討した。
静的問題においては,弾性ひずみエネルギ,弾性ひずみエネルギ密度,全ポテンシャルエネルギ,座屈応力を選択し,動的問題においては,固有振動数,運動エネルギ,ラグランジュアン,ハミルトニアンを選択した。
詳細は省略するが,弾性ひずみエネルギを最小化することで,荷重や形状などの変動がある場合に対して,ロバスト性が高い構造を設計することが可能であることが,明らかになった。
ロバスト構造は先にも述べたように,基準関数を選択し,その基準関数の変動に対する感度値を最小化することで設計できる。本年度の研究において,まず,この設計手法に対するいくつかの問題点を明らかにした。1)より広い範囲でのロバスト性を保証するような設計法。2)異なる変動パラメータの取り扱い。3)その他の設計法である。このうち,1)の問題に対して,より広い範囲でのロバスト性を保証するために,ファジィ関数を利用した「ファジィ・ロバスト構造設計法」を提案し,更に効率的なロバスト構造設計法の選択法を示した。
更に今後は,広義のロバスト構造の基準関数の検討を進め,いくつかの設計法の提案を行う予定である。