表題番号:1995A-269 日付:2002/02/25
研究課題R-L-Diode回路のカオス同期とそのSecure通信への応用可能性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 松本 隆
研究成果概要
1990年,米国の物理学者PecoraとCarroll〔Pecora and Carroll, Phys. .Rev. Lett., 64, p. 821〕はchaoticな系を部分的に分割し,分割された部分系が,もとのchaoticな系と同期(synchronize)する条件を調べた。
これをもとに,1993年米国の電気工学者CuomoとOppenheim〔Cuomo and Oppenheim, Phys. Rev. Lett., 71, p.65〕は,Lorenz方程式をアナログ回路で組み,chaoticな状態を作り出しておき,それにアナログ又はディジタル信号をencodeして信号を送り,受信側でchaotic synchronizationによってdecodeする実験を行い注目されている。伝送される信号はchaoticなので,たとえ盗聴者があっても,対応するLorenz方程式を実現する回路とそのパラメータを知らなければdecodeする事は不可能である。勿論,膨大な計算時間を費やせば,系の同定は不可能ではないが,比較的短時間のsecure通信のためには十分安全であるといえよう。このアイデアは未だ全く初期的段階であるが,考え方としては非常におもしろいものが含まれている。
本研究の目的は本申請者が長年調べてきた単純なchaotic回路(RL Diode回路)を用いてchaotic
synchronizationとそのsecure通信への応用の可能性を探る事である。
この回路はLorenz方程式を実現する回路に比べて圧倒的に単純であり,本格的implementationの際決定的なfactorとなり得よう。またLorenz回路は所謂自律系であるのに対して,R-L-Diode回路は非自律系である事もLorenz系の場合とは異なる側面の一つである。
所期の目的は完全に達成された。具体的には
1. Pecoa-Carrolカオス同期の実験的観測をおこなった。
2. 理論的結果を与え,実験を検証した。
3. Chaotic Maskingの実験を行い,音楽波形の復元に成功した。