表題番号:1995A-266 日付:2002/02/25
研究課題スターブ潤滑下における非真円ジャーナル滑り軸受の油膜破断
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 林 洋次
研究成果概要
今日のエネルギー問題ならびに環境問題の観点から,水車,タービン,ポンプなどの大型回転機械ならびに自動車や船舶などのエンジンの分野において,潤滑油消費量の大幅な低減が不可欠である。しかし,潤滑油の減少はこれらの機械の各種の滑り軸受の油膜破断による潤滑不良という逆効果をもたらすが,潤滑油が不足している状態すなわちスターブ潤滑条件下の潤滑メカニズムに関する系統的な研究はほとんど行われていない。
そこで本研究では,その軸受すきまが複数のくさび領域と逆くさび領域から構成される非真円ジャーナル軸受の楕円軸受を取り上げ,油膜破断が発生し消滅し再び発生すなわち複数の油膜破断が発生する潤滑メカニズムをスターブ潤滑下で明らかにする。
(1)実験的研究では,非真円軸受の楕円ジャーナル軸受の試験機を設計試作した。回転する軸を玉軸受で支持し滑り軸受をベットに固定し,軸に非接触変位計を埋め込み回転しながら軸受すきま形状を計測することによって,軸受すきまが所定のくさび形状と逆くさび形状のもとで,潤滑油の供給流量や供給孔の位置や回転数を変化させて,透明なアクリル樹脂で製作した軸受の軸受すきま内の油膜の生成消滅ならびに油膜破断現象を写真撮影し,また油膜圧力分布を測定して,スターブ潤滑下における楕円軸受の油膜破断と軸受性能を実験的に解明した。
(2)理論的研究では,実験によって明らかにされた油膜破断の発生原因と消滅原因を境界条件として考慮するために,供給孔から供給された潤滑油によって形成される第1油膜と油膜破断領域を経由して再び形成される第2油膜の境界条件が互いにどのように関連するかなどを明らかにしてから,各油膜に対する偏微分方程式の潤滑方程式を自由境界問題として,コンピュータによって数値解析して,油膜形状や軸受性能を理論的に求めた。
(3)これらの理論値と実験結果を比較検討して,スターブ潤滑下における潤滑メカニズムを解明した。