表題番号:1995A-264 日付:2005/05/31
研究課題離散事象型システムシュミレーションの並列処理技術に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 成田 誠之助
研究成果概要
離散事象型システムシュミレーションの並列処理に関する主な問題には,並列計算機の処理要素(PE)間で行われる仮想時刻(シミュレート時刻)同期の方法と,シミュレーション対象モデルの並列計算機へのマッピング方法の二点があげられる。仮想時刻同期手法に関しては従来から多くの研究がなされているが,実際に並列シミュレーションを行う場合,その前段階としてシミュレート対象モデルを分割し,各PEへマッピングする作業がある。通常マッピングは各PEの負荷分散,PE間通信コストの最小化などを目標に行われるが,実際のモデルではそれらすべてに最適なマッピングをすることはできない。そこで,各項目への対応はPEDES実行時に適用する仮想時刻同期手法を選択する上で重要である。しかし,従来は各モデルに対して適切なマップを用いて手法評価が行われていたため,適切なマップを作ることが難しい実際問題と評価条件との間に大きな隔たりがあった。申請者は実際の並列シミュレーションで生じる様々な状況をマッピングを変化させることによって作り出し,それらの状況下での各手法の特徴を富士通研究所の高並列計算機AP1000を用いて明らかにすることを試みた。選択した仮想時刻同期手法は代表的なChandy and Misraのヌルメッセージ法,バリア同期を用いる同期法,申請者が提案した受信統計に基づくヌルメッセージ法した。評価には,多くの離散事象システムの基本となる待ち行列ネットワークモデルを用い,負荷分散,通信コスト指標の変化変化に伴う各仮想時刻同期手法の実行性能を測定した。その結果,申請者が提案した受信統計に基づくヌルメッセージ法がすべての状況下で常に安定した性能を発揮し,実際問題では最も有効であることが分った。さらに,それらの実験の中から従来通信コスト指標に使われてきたPE間遷移事象数が,実際の通信コストを反映していないことも分った。