表題番号:1995A-263 日付:2002/02/25
研究課題生化学的C1単位転移に関る化合物群の有機化合的モデル化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 多田 愈
研究成果概要
C1-単位(-CHO,-CH2OH,CH3)の分子間転移反応はアミノ酸,核酸,メタン,酢酸等の生合成に関っており,特にDNA合成における核酸塩基ウラシルからチミンへの変換を制御することによる制ガン性との関連において葉酸の働きが注目されている。また,核酸合成とは別にホモンスティンや補酵素Mのチオール基に転移したメチル基は生体内でのメチル基源として各種の生合成反応において重要な働きをしている。
本研究では上記2点の過程に関わる補酵素である葉酸,メタノプテリンの類縁体を合成し,生体内反応をモデル化すること,および補酵素B12からイオウ化合物へのメチル基転移に関与するほ酵素類縁体を合成し,生体内反応をモデル化することを目的とした。
補酵素葉酸はプテリジン骨格を有しており,その骨格合成を行った。2-アミノ-3-ニトロソウラシルにホスゲン三量体を作用させて得られるジアジノンは各種電子供与性オレフィンと反応して,高収率でプテリジン類を与えることを発見した。この反応は一般性が高く,オレフィンとしてエナミン類,エノールシリルエーテル類と高い反応性を示した。また,反応の位置選択性も高く,6-位置換体のみを与えた。この反応を利用して6-位にアニリノメチル置換基を有する葉酸類縁体の合成に成功した。
次に補酵素B12のモデル化合物としてメチルコバロキシムを選び,この化合物からチオエステル類,ジスルフィト類のイオウへのメチル基移動を検討した。この際メチルコバロキシムの下方配位子を,立体容積の異なる配位子(ホスフィン類),電子的性質の異なる配位子(パラ置換ピリジン類)と変えてその反応性を調べた。その結果,チオエステルとジスルフィドは異なる機構でメチルラジカルを受け取っていることが分った。
この様にメチル基転移に関わる補酵素群の合成と反応機構の解明において重要な知見を得ることが出来た。