表題番号:1995A-256 日付:2002/02/25
研究課題フーリエ変換赤外分光法による気液界面での単分子膜の構造と反応性に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 伊藤 紘一
研究成果概要
上記の課題について,次の二項目の研究を進め下記の成果を得た。
(1)フーリエ変換赤外外部反射分光法によるLangmuir単分子膜の振動スペクトル測定装置の試作
全面をテフロンコートした3cm×10cm×0.5cmの水槽,アクチュエータによって位置の自動制御可能なバリアー,および小型Whilehelmy Balanceとを組み合わせて水面上単分子膜(以下L膜)の赤外外部反射(以下EIR)スペクトル装置を作成し,フーリエ変換赤外分光器に設置して,水槽におけるpH値と共存金属の種類を変化させつつアラキジン酸L膜のEIRスペクトルを測定した。その結果,この方法によって,4000-700cm-1の領域で十分なS/N比のEIRスペクトル測定が可能なことを確かめるとともに,アラキジン酸L膜の表面圧の上昇に伴う液相→固相転移における水素結合状態の変化についての直接的な知見を得ることは出来た。
(2)ジアセチレン誘導体L膜の構造と紫外光照射による重合過程の研究
水槽(pH7.5)にPb2+およびCd2+イオンが存在するそれぞれの場合について,末端にカルボキシル基を持つジアセチレン誘導体(以下DA)L膜のEIRスペクトルの表面圧依存性を詳しく解析した。その結果,カルボキシル基のCOO-逆対称伸縮振動バンド(νas(COO))が
Pb2+イオン共存下では1493cm-1に観測されるのに対してCd2+イオン共存下では1528cm-1に観測されL膜と金属イオンとの相互作用様式に大きな相違のあること,表面圧20mN/mでの光重合反応はPb2+イオン共存下でのみ進行することが分かった。また,光照射開始後10分までは分子軸の配向には全く変化がないが1493cm-1のνas(COO)バンドの強度が速やかに減少し,10分以後に不規則構造への転移を含む配向変化が起こることが明らかになり,L膜の光反応に伴う構造緩和にいての重要な知見を得ることが出来た。