表題番号:1995A-246 日付:2002/02/25
研究課題カソードルミネッセンスによる岩石中のマイクロクラックの同定
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 高木 秀雄
研究成果概要
カソードルミネッセンス(CL)観察の機器として市販されているルミノスコープを偏光顕微鏡に装着し,岩石中の癒合割れ目(healed microcrack)を観察し,通常の顕微鏡では観察できない流体移動の軌跡を調査するのが本研究の目的である。
95年度は,本研究を遂行する上での基礎研究として,発光の弱く,また発光の原因がまだ解明されていない石英について,溶液から沈殿した未変形の水晶のCL像を観察し,その特徴を押さえた。次に,予察的に中央構造線や跡津川断層沿いの花崗岩や,秩父帯の石灰岩を貫く癒合割れ目についても観察した。
結 果
1. 石英のCL像
試料はブラジル(熱水鉱床),長野県川端下(接触交代鉱床),神奈川県玄倉(石英閃緑岩中),山梨県竹森(堆積岩中の脈石英)の水晶について観察し,あわせて合成水晶についても検討した。その結果,天然の水晶のCL像はほとんど結晶外形に平行なゾーニングが認められた。一方,合成水晶にはCL像は観察されず,その原因として微量の鉄の存在がquencherとして働いたと考えられる。
2. 岩石のマイクロクラックのCL像
石灰岩中のものは一般に周囲の方解石に比べて明るく発光し,脈どうしの微妙な発光の違いで切断関係が分かる場合もある。
花崗岩中のものは通常マイクロクラックを膠結する部分の方が発光が弱い。石英の場合,通常の偏光顕微鏡下で認められる流体包有物の配列などが,ゾーニングは殆ど見られず発光は微弱であるものの,ある幅を持ったマイクロクラックのCL像が識別できた。また,偏光顕微鏡ではまったく識別できない部分が,CL像ではマイクロクラックとして明瞭に識別できることが判明した。さらに,カリ長石や斜長石のCL像にもマイクロクラックが石英以上に明瞭に観察された。従って,地殻内部の岩石中の流体移動-再沈殿のプロセスを解明する上で,CL像が果たす役割は大きい。