表題番号:1995A-245 日付:2002/02/25
研究課題変成岩岩石学のための統合化相平衡関係計算システムの開発とその活用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 小笠原 義秀
研究成果概要
変成岩岩石学の分野で,変成作用の物理化学的条件解明のためにしばしば利用される下記6種の相平衡図の計算と作図をする統合化システムをUNIX上で開発した:(1)P-T図,(2)T-XCO2図,(3)log fO2-T図,(4)T-X1図,(5)P-X1図,(6)組成-共生図。開発のベースにしたシステムは筆者が従来からUNIX上で開発してきた "THERM" であり,その機能を大幅に向上させた新バージョンとなっている。鉱物・流体の熱化学データについては,これまでに公表されている2, 3のinternallyconsistent datasetを引用しデータベース化した。すべての作図はX-Window上で行われるようになっている。
また,作図プログラムはX-Window下のXlibライブラリのみで記述されている。
(1)~(3) は純粋鉱物相からなる複合系の相平衡に対して応用できる。反応の安定関係の判定には
Schreinemakersの方法を用いている。計算可能範囲を圧力100 kbar・温度2000℃まで拡大したため,ダイアモンドやコース石が出現することで近年特に注目を集めている超高圧変成作用の相平衡にも応用可能になった。
既に超高圧変成作用に応用できるCaO-MgO-SiO2-CO2-H2O系の相平衡は報告した(Ogasawara et al., 1995: The Island Arc, vol.4, no.4)。
(4)~(6) はMg-Fe系やNa-K系などの固溶体を含む複合系の相平衡の計算に利用されるプログラムで,鉱物間のイオンの交換分配平衡のような,2種以上の固溶体鉱物の化学組成と温度・圧力との関係を明らかにする。
現在の計算可能範囲は10 kbar・1000℃であるが,近い将来これを拡大し,超高圧変成作用にも活用できるようにする予定である。このプログラムの概要は1995年12月のAGU学会で報告した(Tabei and Ogasawara, 1995)。
本システムの概要は1996年8月の第30回IGC(北京)で報告予定である。