表題番号:1995A-233 日付:2002/02/25
研究課題乳児をもつ母親の養育意識に影響する要因に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 第一・第二文学部 教授 大藪 泰
研究成果概要
〈研究目的〉
1995年度の研究では,夫婦関係にある父親と母親のデータを用いて,父親の仕事中心志向と家庭中心志向の強さと,母親の育児満足感を中心とした意識内容との関連性を検討することが目的にされた。
〈研究方法〉
長野県上田市に在住し,4ヵ月児あるいは10ヵ月児をもつ母親とその夫に質問紙調査を行った。質問紙の領域と項目は,前年度に報告されたものと同じである。夫婦の平均年齢は,4ヵ月児の母親と父親が28.8歳と32.0歳,10ヵ月児では29.6歳と32.6歳であった。有効回答した夫婦は,4ヵ月児群が120組,10ヵ月児群が101組であった。
〈結果と考察〉
父親の仕事中心志向の強さは,母親からも父親からも,母親の育児満足感,落ち着きや自己評価という母親のパーソナリティ特性,乳児の気質,そして夫婦関係の良好さと関連しないと評価されていた。従って,父親の仕事に対する態度は,こうした領域とは独立した次元を構成すると推測された。
仕事中心志向の父親は,母親の仕事阻害感を母親以上に強く評価する傾向が認められた。また,仕事中心志向の強い父親をもつ母親は,父親が感じる以上に父親の家事や育児への協力が低いと評価していた。
家庭中心志向の強い父親は,母親の育児満足度が高く,家事や育児への強力に熱心で,良好な夫婦関係を維持しているとみなしており,母親もまた同様な評価をくだしていた。また,家庭中心志向の父親をもつ4ヵ月児の母親と10ヵ月児の母親を比較すると,後者のほうが育児満足度が高く,夫婦関係もより良好になるとみなしていた。
最後に,家庭中心志向の父親をもつ母親では,育児援助の社会的ネットワークを多く持つ傾向が認められ,家庭中心志向の強い父親の家庭では,開放的で地域社会との結びつきが強くなり,育児援助に活用できる社会的資源が豊かになることが示唆された。