表題番号:1995A-224
日付:2002/02/25
研究課題フランスにおける略式株式会社の制度化-フランス会社法における規制緩和の研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学部 | 教授 | 鳥山 恭一 |
- 研究成果概要
- フランスでは,1994年1月3日の法律第94-1号によって,既存の会社形態とは別に新たな会社形態である「略式株式会社(societe par actions simplifiee)」が制度化された。
フランスの会社法は会社の運営に関して多数の詳細な強行規定を定めており,経営者の側からはそれらの規定によって企業の円滑な運営が妨げられていると批判される場合が少なくなかった。周知のように,1992年末をもってヨーロッパの市場統合は一応の完成をみている。市場統合が完全に実現した場合には,いうまでもなく,企業はその市場の内部で自由に企業活動を展開できることになる。したがって,ヨーロッパの企業はその後は,EU構成国の会社法のうち,企業経営にとってもっとも有利な内容をもつ会社法を選択できることになる。
構成国にとっては,自国の会社法による企業の組織化を確保するためには,自国の会社法を経営者の要求に適合させることが必要となる。かつてアメリカの各州の間で,その州の会社法による設立を促すために行われたrace to the bottom (会社法規制の緩和の競争)と同じ現象が,今後はEUでもみられることになるとも考えられる。フランスの1994年の立法による略式株式会社の制度化は,まさにこの目的のために実現された立法である。
本年度はこの会社形態の内容を検討する以下の論稿を公表した。引き続き,この会社形態が実務上どのように利用され,またそこにどのような問題が生じているかを検討し,この会社形態がフランスさらにはEUのレベルの会社法に及ぼす影響も検討する予定である。実際,何人かの論者によって,この「略式株式会社」は,EUで制度化の作業が進められている「ヨーロッパ会社」のモデルとなり得るとも指摘されている。
1)「(立法紹介)略式株式会社の制度化」日仏法学19号(日仏法学会,1995年)109~113頁。
2)「(資料)フランスの略式株式会社制度」比較法学29巻1号(早大比較法研究所,1995年)143~155頁。