表題番号:1995A-221 日付:2002/02/25
研究課題金融自由化下の我が国の貨幣需要関数について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 森 映雄
研究成果概要
昭和50年代央からはじまったわが国の金融自由化は,預貯金金利の完全自由化が平成6年10月に完了し,金融業務分野の自由化に関連する部分を残す結果となっている。
この間様々な金融商品・取引技術が開発され,一方で主体の金利選好意識が向上-その要因としては,高度成長期から低成長期への移行に伴なう稼得所得の伸び率の低下,金融・金利情報の汎化,殊に金融資産の蓄積が指摘できる-によって主体の金融資産選択が多様化・変動性を高めてきている。この現象が貨幣需要関数の変動性を高めている。
本研究では,「Buffer Money」という概念を導入をしてわが国の貨幣需要関数が金融自由化の進展の中で不安定性を高めてきていることを論ずる。その際,殊に個人部門のそれに焦点をあてる。
個人部門の金融資産の蓄積は,流動性制約の障壁を低くするとともに,個人部門の資産選択の時間的視野の可変性を高くした。(それには,総合口座等の金融商品の開発も寄与しているが)それは,将来の不確実な事態や有利な取引機会の獲得のための「Buffer Money」の保有を結果させる。EV理論を多期間分析に応用すると,今期の主体の資産選択行動は,来期の確率的に予測不能な事態等を考慮すると,均衝値ではなく,資産選択可能領域を設定できる。主体の資産選択可能領域は,制度的諸要因に規定される部分もあるが,主体の資産量,その満期構造,主体の時間的視野,主体の資産への接近可能性等々に依存する。その結果が,貨幣需要関数-殊に個人部門に焦点をあてると,個人部門の貨幣性資産の選択-の不安定性に影響する。
この「Buffer Money」の概念を用い,近年の日本の個人部門の貨幣需要関数を実証分析をする。