表題番号:1995A-210 日付:2002/02/25
研究課題放送劇をドイツ語教育に利用するための研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 語学教育研究所 教授 岡村 三郎
研究成果概要
本研究ではドイツ語教育における種々のメディア利用の可能性をさぐる一環として,ドイツでは今でもポピュラーなジャンルであり旺盛な創作活動が続いている放送劇(Horspiel)をドイツ語教育の教材として利用する方法を研究した。
第一段階としては実際にラジオで放送されその後カセットなどの形で市場に出ている放送劇,および最初からドイツ語教育用に作られた放送劇をできるだけ多く集め,試聴しそれらが教材としてふさわしいか,そしてどの学習者のレベルで使うのに適当かという点を検討した。その際,予想外に困難だったのは,(最初から教材用に作られた放送劇を除いて)それぞれの放送劇のスクリプトを手に入れることだった。Gunther Eich,
Heinrich Bollという二人の放送劇の巨匠を除けば,ほとんど不可能と言ってもいい。ドイツ人にとって放送劇は耳で聞いて楽しむためのものであり,本来活字にして公刊するものではないからである。しかし教材としてはスクリプトがなければ非常に扱いにくい。少なくとも名作として評価も定まり,市場にも出ている放送劇についてはこれからもそのスクリプトをなんとかして集め,視聴覚教室などでカセットとともに利用者に提供する必要があるだろう。
第二段階としてはこうして集めた放送劇のいくつかを語研の授業で使い,二つの授業方法を試してみた。一つの方法では,スクリプトを前もって読むことをせず,放送劇を耳で理解することに重点を置いた。繰り返し耳で聞き,比較的ゆっくりと先に進み,その都度聞いたこと,そしてこれからの進行について自分なりの仮説を立てる,そして最後にスクリプトを読みそれをチェックするというやり方である。もう一つのやり方はスクリプトを前もって読み,そのあとで放送劇を聞く。聞くことによって(効果音などの助けも借りながら)自分が読んだスクリプトの理解を深めようと考えた。学生たちの圧倒的な支持を受けたのは前者である。考えぬかれた音の効果の迷宮に自ら分け入って,いろいろ仮説を立ててみるのが楽しかったようである。
今回の研究はまだ緒に就いたばかりである。これからは今回得られた知見を生かし,さらに効果的な授業法を求める必要がある。とともに,集まった放送劇の一つ一つについて,内容および言葉の難易度に関して分かりやすいランク付けをし,学生が視聴覚教室などで利用しようとする際の選択の手助けを与えるという課題もあり,するべきことは多い。