表題番号:1995A-208 日付:2002/02/25
研究課題エレクトロニクス分野における複合機器の競争優位に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) システム科学研究所 助教授 山田 英夫
研究成果概要
1. 研究の方法論
以前から,複数の機能をワンボックスで実現しようとした複合機器は多数存在してきた。本研究では,過去の複合機器の成功/失敗要因を分析することによって,今後登場するであろうマルチメディア機器のインプリケーションを与えることにある。
複合機器に関する公的データはないため,本研究の元データとしては,過去10年の日経テレコムのデータベースを手掛かりとした。その中から研究対象を民生用エレクトロニクス機器に絞り,LD・CD兼用プレーヤー,コードレス留守番電話,VTR一体型テレビ,電話・FAX・ワープロ一体型パソコン,複合機能付き腕時計,統合パソコン・ソフト(現在解析中)の事例研究を行った。
2. 複合機器の成功要因仮説
複合機器は,別々に単機能機を購入した場合より,複数の機能が組合わされ効用が大きくなる側面(プラス・シナジー)と,複数の機能が組合わされて操作が複雑になり,効用が小さくなる側面(マイナス・シナジー)がある。事例研究からは,プラス・シナジーを極大化し,マイナス・シナジーを極小化できた複合機器が,成功をおさめていた。
具体的には,プラス・シナジーの極大化に関しては,(1)複合機でなければ実現できない新たな価値の実現,(2)コストセーブの実現が重要とされ,マイナス・シナジーの極小化に関しては,(1)技術的安定性をもつ(品質,技術進歩,規格),(2)単機能機の使用方法の周知,(3)使用状況がバッティングしないことが重要とされた。
3. 今後の研究にむけて
今回の研究は,複合機器の成功要因仮説を発見することに目的があった。今後の研究としては,本研究で導かれた仮説より多くの事例にあてはめ,その妥当性をチェックし,今後のマルチメディア機器への提言としていきたい。