表題番号:1995A-207 日付:2008/03/22
研究課題CALSとEDIが我が国産業に及ぼす影響の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) システム科学研究所 教授 平野 雅章
研究成果概要
EDI(Electronic Data Interchange)に代表される商流の電子化(ここでは,EDIとは何らかの広く受け入れられている標準フォーマットを採用している電子取引を指し,企業または企業グループ特有のフォーマットによる電子取引は含まない)はようやくわが国でも普及に弾みがつき始めたが,この1-2年はCALS(ComputerAided Logistic SupportまたはComputer-aided Acquisition and Logistic Support等)が大きく脚光を浴びている。しかし,本研究の調査によると,米国におけるCALSは国防省の管轄を離れて以来求心力を失い,民間でもこれを推進する動きは特定の産業等に偏っているようである。わが国でのCALS推進は事実上官の指導の下,業界毎の縦割りで行われているため,業際のインターフェイスに問題が発生する可能性がある。かつて本研究申請者は「産業構造がEDI標準生成に影響を与える」ことを示したが,本研究を通じ「EDI標準が二つの要因によって産業構造と商習慣に影響を与える」ことが明らかとなった。すなわち,まず,標準化を通じた商習慣に関する知識の「形式化」は,従来からの正当化できない商習慣の見直しを迫るため,商習慣が大きく変化することがあり,これは競争条件を変化させることにより産業構造にもインパクトを与える。第2に業際的なEDIの試みはしばしば関係する業界の産業構造や商習慣を変化させる。今後の方向性としては,業界によってレベルが大変異なるEDI標準の統合化を図るときには,(その差異に起因する)複雑性と(業界毎に水準と変化率が異なることによる)多様な変化の管理が,課題となることが明らかとなった。これに対する対応として,最近の国際経営学の知見の応用が一つの候補として示された。