表題番号:1995A-172 日付:2002/02/25
研究課題ヘリウム混合ガス圧暴露によって生じる運動麻痺への再圧の効果について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 宮崎 正己
研究成果概要
本研究は,きわめて短い時間の高圧曝露にヘリウム混合ガスを用いたときの再圧の影響を見たものである。
実験方法は,Wister系雄ラットを小型動物用高圧タンクに入れ,ヘリウム酸素混合ガスで7ATAまで急速加圧し,20分間保圧した後,毎分20atmの速さで1ATA(大気圧)まで減圧した。ヘリオックス圧曝露からの減圧終了10分後,ラットを高圧タンクから取り出し生死を確認した。そして,ヘリオックス圧曝露からの減圧終了後15分から20分間,3ATAの空気再圧をおこなった。
3ATAにて20分間の空気再圧を行った実験では,12例中6例が両後肢麻痺,4例が起立できない状態であった。
また,残りの2例では,異常動作はみられなかった。
空気再圧後4例が死亡したが,いずれも再圧前は,両後肢麻痺の状態であり,再圧中は症状に変化はなかった。このうち2例は,再圧を終了し,1ATAに戻った直後,激しく喘ぎ,死亡した。精巣上体付随の脂肪組織では,血管外気泡と共に大量の気泡がみられた。
再圧治療が効果をあげるには,症状がなくなるまで気泡を縮小させるばかりでなく,その後の減圧で気泡が拡大して再び減圧症が引き起こされたり,途中の経過で新たな気泡が形成されないことが必要とされている。
不完全な再圧では,気泡が吸収消失せず溶解窒素量が増加すること,また再圧中に縮小した静脈中の気泡が動脈側へと移動し,減圧中に動脈側で再度大きくなり,より重篤な症状を引き起こすことなども減圧症の悪化や再発の要因として挙げられる。