表題番号:1995A-161 日付:2002/02/25
研究課題柔軟多体動力学の記号生成と数値解析法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 専任講師 吉村 浩明
研究成果概要
柔軟なロボットアームや宇宙構造物等に代表される,いわゆる柔軟多体系の動力学解析は,システムの最適設計の要請からも極めて重要になっている。ボディの数が増大するに従ってシステムの自由度が莫大なものとなるため,とくにモデリングやシミュレーションにおいてコンピュータの援用は不可欠な手段となるが,これらに関連していくつかの重要な技術的課題が生じている。主な問題点は以下の通りである。
(1)複雑化した柔軟多体系のモデル化
(2)組織的な記号導出アルゴリズムの提案
(3)高速かつ安定な数値積分法の開発
第1の課題について,報告者はノンエナージック性に基づいた広義回路論的観点から,座標変換,非ホロノーム拘束,ダランベールの原理などの運動学的,力学的関係をシステムの接続構造としてモデル化し,とくに柔軟多体系に特有に現出する,柔軟体の有限変形に伴う幾何学的非線形性をノンエナージックマルチポートとしてモデル化した。
第2の課題については,上記のノンエナージックマルチポートで表された接続構造について,状態変数間の入出力関係に基づいた入出力係数行列と入出力行列による数学モデルを提案したうえで,力と速度に関する2
つの入出力係数行列の直交性に基づく従属変数消去アルゴリズムを提案した。
第3の課題に関しては,ヤコビ行列が極めてランダムなスパース行列となるため,行列の非零要素の配置に関する位相構造から逆行列を計算する高速化アルゴリズムを提案した。また,スティッフ安定な数値積分法の開発を目的として,数値積分法の安定性の比較・検討を行った。線形微分方程式による試験方程式を用いた数値解析では,安定領域が十分に広いBDF法が数値的安定性において優れているが,柔軟多体動力学の数学モデルである非線形微分代数方程式ではニュートン法における数値誤差によっても数値的安定性が影響されることを確認した。
以上の研究成果の一部は,日本機械学会講演論文,研究展望および学位論文として発表している。